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寺村裕治先生が 第51回日本臓器保存生物医学会学術集会にて「学会賞」を受賞

当社の科学技術アドバイザーである寺村裕治先生が、第51回日本臓器保存生物医学会学術集会にて学会賞を受賞されました。先生がスウェーデンのiCoat Medical社、ウプサラ大学らと共同で開発した、腎臓の血管内皮を両親媒性ポリマーでコーティングし、腎移植後に起こる虚血再灌流障害を抑制する技術を評価されての受賞です。

 

 

~移植医療の安全性と成功率を高める「血管バリア」技術~

日本では慢性腎臓病の患者数が多く、その一部は人工透析を必要とします。透析は患者さんの生活の質(QOL)に大きな負担がかかる医療です。腎臓移植は透析からの解放や長期的な予後改善の可能性をもつ有力な治療法ですが、移植した臓器が体内で「長く生き残る(生着)」ことが重要になります。移植直後に起こりやすい免疫反応の一種である 虚血再灌流障害(IRI)が、移植成功後の臓器障害や拒絶のリスクを高め、長期生着を妨げることが問題となっています。

これまで、IRIを確実に抑える薬剤や技術は確立されておらず、手術の成功は医師の経験や腕に大きく左右されることから、新しいアプローチが強く求められてきました。本研究はこうした長年の課題に応える有望な一歩となり、今後の移植医療の発展に向けた重要な基盤を築くものです。

【研究概要】

研究目的: 両親媒性ポリマー、とくにポリエチレングリコール脂質(PEG脂質)を用いて血管内皮表面を人工的にコーティングし、腎移植における虚血再灌流障害を抑制する技術の有効性を検証する。
研究方法: PEG脂質を腎臓内の血管内皮に短時間・低温処理で付着させ、薄い高分子膜(人工グリコカリックス)を形成。大動物(ブタ)腎移植モデルを用いて、補体・凝固系の過剰活性化、炎症性サイトカインの上昇、血管内皮傷害などの指標を横断的に評価し、IRI 抑制効果を検証。
主な結果:PEG脂質による内皮コーティングは、移植後早期の免疫反応と臓器障害を有意に抑制する可能性を示した。
結論:形成されたコーティング膜は一時的に血管内皮を保護し、時間とともに自然消失する性質を持つため、安全性と操作性に優れる。これにより移植腎の機能回復が促進され、長期生着率向上が期待される。

この成果の詳細は、2025年9月24日にAmerican Journal of Transplantation誌に掲載され、再生医療分野で注目を集めております。

【株式会社 U-Factor】
設立:2020年3月
代表者:代表取締役社長 井島 英博
所在地:東京都千代田区麹町六番町 7-11 ESCALIER 六番町 1 階
URL:https://u-factor.com/
事業内容:U-Factor®液によるアルツハイマー型認知症などの難治性疾患を対象とした治療薬の製剤化を目指しています。世の中には有効な治療方法が確立されていない疾患が多数存在し、そのような疾患に対して、当社が開発した U-Factor®液を用いてアンメットメディカルニーズにこたえる新薬開発に取り組んでいます。

【国立研究開発法人 産業技術総合研究所 細胞分子工学研究部門】
設立:2020年4月
代表者:研究部門長 小松 康雄
所在地:茨城県つくば市東1-1-1 中央事業所6群
URL:https://unit.aist.go.jp/cmb5/index.html